このページの要点
- 民法754条は令和6年法律第33号で削除され2026年4月1日に施行。取消権を行使しない確認ではなく、削除の事実を確認する書き方にする。
- 行為準則は、会わない相手・使ってよいアカウント・門限など、外から確かめられる形で書く。
- お金の問題は、管理の委託・通帳等の開示・事前の相談・記録開示型の条で、流れを確かめられるようにする。
- 違反したときは段階を踏ませ、一定期間後に再開の協議を求められる出口を置く。守れない約束は書かない。
結論:夫婦間の誓約書は「何が違反か」「違反したら何が起きるか」「出口」を書く
配偶者の不貞やギャンブル、浪費、借入が分かった後、離婚はせずに婚姻を続けると決めた夫婦が交わすのが、夫婦間の誓約書です。「二度としません」という一文だけの誓約書も見かけますが、それでは何をしたら違反なのかが分からず、違反しても何も起きません。書面を交わした意味が、トラブルの日に残らないのです。
事務所が夫婦間の誓約書を作るときに組み立てるのは、三つの要素です。一つ目は、守るべき行為を具体的に書くこと(行為準則)。二つ目は、違反したときに何が起きるのかを段階で書くこと。三つ目は、違反の後にどうやって関係を立て直すのか、という出口を書くことです。そして、守れない約束は書かないという方針を、依頼者と最初に共有します。
このページでは、夫婦間の契約の取消権を定めていた民法754条の削除と誓約書への書き方、不貞の再発防止の行為準則、ギャンブル・浪費・借入の再発防止の措置、違反したときの段階と出口、立会人や根拠条文の書き方を、事務所の夫婦間の誓約書・合意書から整理します。誓約書に書いても効力が認められにくい約束(離婚の約束、親権の事前の決定など)は誓約書で約束しても効かないこと、違約金の決め方は違約金の設計のページで扱います。
一方の誓約か、双方の合意か:題名と署名
夫婦間の書面には、不貞などをした側の配偶者だけが約束して他方に差し入れる「誓約書」と、夫婦の双方が何らかの約束をする「合意書」があります。事務所が作成した書面には、婚姻を続ける夫婦の間で交わす書面を「合意書」と題したものがあります。反対に、配偶者の不適切な関係をめぐる書面では、関係をもった側の配偶者が約束をする「誓約書」の形をとり、不貞の相手方が差し入れる誓約書とは別に作りました。
どちらの形にするかは、被害を受けた側にも何か約束してもらう必要があるかで決めます。たとえば、違反の後に再開の協議を求められたら正当な理由なく拒まない、という出口の約束は、被害を受けた側が負う約束です。こうした約束を入れるなら、書面の題名が「誓約書」であっても、双方が署名し、双方の約束として書きます。題名と中身の考え方は、不貞の相手方との書面と同じです(書面の種類と当事者の組み方のページを参照)。
民法754条の削除と、誓約書への書き方
かつての民法754条は、夫婦間でした契約は、婚姻中いつでも夫婦の一方から取り消すことができる、と定めていました。夫婦間の誓約書が「後から取り消されてしまうのではないか」と心配されてきたのは、この規定があったためです。この規定は、民法等の一部を改正する法律(令和6年法律第33号)によって削除され、2026年4月1日に施行されました。e-Gov法令検索で確認できる現行の民法では、第753条と第754条はいずれも「削除」となっています。
改正法の附則は、改正後の民法の規定は、附則に特別の定めがある場合を除き、施行前に生じた事項にも適用するとしつつ、改正前の民法の規定によって生じた効力を妨げないとしています(同法附則2条)。施行前にすでに取消しの効果が生じていたものは、改正後もその効果が失われるわけではありません。これから夫婦間の誓約書を交わす場合は、夫婦であることを理由に一方の意思だけで取り消すことはできない、という前提で書面を作ることになります。
第○条(本誓約書の効力)
1甲及び乙は、夫婦間でした契約を婚姻中いつでも夫婦の一方から取り消すことができる旨を定めていた民法第754条が、民法等の一部を改正する法律(令和6年法律第33号)により削除されたことを確認する。
2甲及び乙は、本誓約書が、夫婦間の合意であることのみを理由として、当事者の一方の意思表示により取り消されるものではないことを確認する。
「取消権を行使しないことを確認する」という書き方ではなく、規定が削除された事実を確認する書き方にしています。削除された規定を前提に「行使しない」と約束させると、規定がまだあるかのように読めるためです。
事務所が作成した夫婦間の誓約書では、754条が削除され施行済みであることを確認したうえで、この誓約書は一方的な意思表示で取り消せないと明記しました。取消権を行使しない確認ではなく、削除された事実の確認へと書き方を変えています。ただし、754条の削除によって、夫婦間の約束であれば何でも効力が認められるようになったわけではありません。詐欺や強迫による意思表示の取消しのような一般のルールは夫婦間でも働きますし、離婚の約束や親権の事前の決定のように、そもそも効力が認められにくい約束もあります。
「二度としない」で終わらせない:行為準則を具体的に書く
再発防止の約束は、何をしてはならないかを、外から確かめられる形で書きます。事務所が作成した夫婦間の誓約書(趣味や副業の活動を続ける配偶者の異性関係をめぐる誓約書)では、行為準則を5つの号に分けました。
- 異性と1対1で会わない。
- 開示済みのアカウント(別紙のアカウント一覧に記載したもの)以外で、異性と連絡を取らない。
- 異性を活動の運営に関与させない。
- 活動の集まりには門限を設け、宿泊しない。
- 活動で関わる異性との連絡は、活動の予定の調整に限る。
ポイントは、配偶者の仕事や生活の実態に合わせて、守れる形で線を引いていることです。活動の性質上、関わる異性と一切連絡を取らないことは難しいため、連絡の目的を予定の調整に限り、連絡に使うアカウントも別紙で特定しました。アカウントを特定しておけば、違反があったかどうかを、そのアカウント以外での連絡の有無で確かめられます。
不貞の定義を広げる書き方もあります。夫婦間の誓約書と不貞の相手方との示談書を組み合わせた案件では、誓約書の中の不貞行為の定義を、肉体関係だけでなく、二人きりでの面会、継続的な連絡、社会通念上婚姻の平穏を害する親密な関係にまで広げました。違反の認定は、配偶者が取得した資料に基づき、社会通念に照らして合理的に判断するとし、修正版では、違反した側は不合理な争いをしないという一文を加えています。婚姻を続けるかどうかの判断を留保した誓約書では、納品版で、異性と私的な連絡先を交換しない条項を加えました。
生活全般の行動を約束する誓約書もあります。婚姻を続ける夫婦の合意書では、収入の全額を家計の口座に入金すること、飲酒、無断の借入、暴力、接待を伴う飲食店やギャンブルの禁止を約束し、修正版で、保険の解約や契約者貸付などの禁止と、宿泊を伴う出張の事前の承諾を加えました。家計に関わる約束は、口座や手続の名前で特定しておくと、守られているかを確かめやすくなります。
お金の問題の再発防止:ギャンブル・浪費・借入
ギャンブルや浪費、借入の再発防止の誓約書では、「もうしない」という約束だけでなく、お金の流れを配偶者が確かめられる仕組みを書きます。ギャンブルによる共有財産の流用をめぐる夫婦間の誓約書では、事務所は次のような再発防止の措置を条文にしました。
ギャンブル・浪費の再発防止として書いた措置
- 収入の全額の管理を配偶者に委ね、通帳やカードを開示し、預ける。
- 一定の額を超える支出は、事前に配偶者に相談する。
- 遊技業の業界団体が設けている、本人や家族の申告による入店制限の仕組みの利用を申請する。
- 必要なときは、専門の機関を受診する。
- 発覚の後、すでにギャンブルをやめている事実を、誠意として書き添える。
最後の項目のように、誓約書には、違反した側の前向きな事実を書き添えることもあります。発覚の後にすでにやめていることなどを書いておくと、誓約書が相手を責めるだけの書面ではなく、これからの行動の約束の書面として読めるようになります。
この誓約書では、流用した額がはっきりしなかったため、当初は「約○万円、正確な額は別途精査」と書いていました。その後、依頼者の「本人の自己申告を信用できない」というご事情を伺い、最終版では「記録開示型」に改めています。通帳や明細を開示させて配偶者が確認し、正確な額が確定できなくても責任を免れない、という書き方です。額が分からないから約束できない、という状態を作らないための工夫です。
ギャンブルと性風俗の利用をめぐる夫婦間の誓約書(立会人つき)では、給与を現金で受け取る場合に合わせて、受け取った給与を記録簿に本人が自署して記録することとし、給与の受け取りを確かめられる親族に立会人として署名してもらいました。医師やカウンセラーの判断で禁止の対象を広げられること、誘われた際には第三者に誓約の存在を告げることも定めています。修正版では、性風俗の利用を対象に含める趣旨を目的の条に明記し、本人が自由に使える額の上限を引き下げました。借入を重ねた配偶者の誓約書では、借入の全面的な禁止にリボ払いや分割払いを含めることを最終版で加え、生活に困ったときの報告の義務も加えています。
借入の禁止にリボ払いや分割払いを含めるのは、「借金はしていない、カードの支払方法を変えただけだ」という言い分を封じるためです。お金の問題の再発防止では、禁止する行為を、名前ではなく、お金の流れの実態で捉えて書くことが大切です。生活に困ったときの報告の義務は、困窮を隠して新たな借入に走ることを防ぎ、早い段階で夫婦が話し合えるようにするための約束です。
違反したときの段階と、関係を立て直す出口
違反したら即座に離婚、即座に高額の違約金、という書き方は、婚姻を続けると決めた夫婦の書面としては、かえって使いにくいことがあります。事務所が作成した趣味や副業の活動を続ける配偶者の誓約書では、違反したときの措置を段階で書きました。まずその活動を完全に休止し、次に家族を交えて話し合い、そのうえで違約金が発生する、という順序です。
そして、最終版では出口を設けました。休止から6か月がたっても話合いが調わない場合には、活動の再開の当否について協議を求めることができ、相手方は正当な理由なくこれを拒まない、というものです。違反の有無に争いがあるときは、送受信の履歴などの客観的な資料を参照すること、通知は書面又はメッセージ機能で行い、通常届くはずの時に届いたものとみなす、という一文も加えました。休止に終わりがなければ、休止そのものが守れない約束になりかねません。違反の後の道筋まで書いておくことで、誓約書が関係を立て直すための書面として働きます。
通知を「通常到達すべき時に到達したものとみなす」という一文にも意味があります。民法97条は、意思表示は通知が相手に届いた時に効力を生じるとし(1項)、相手が正当な理由もなく通知が届くのを妨げたときは、本来届くはずだった時に届いたものと扱うとしています(2項)。夫婦の間で関係がこじれると、メッセージを読まない、郵便を受け取らないといったことが起きがちです。誓約書の中で通知の方法を決め、到達の扱いまで書いておくことで、協議の申入れや違反の通知が届いたかどうかの争いを小さくします。
違反したときの扱いの書き方
| 型 | 内容 | 使った場面 |
|---|---|---|
| 段階型 | 活動の休止 → 家族を交えた話合い → 違約金。休止から一定期間後に再開の協議を求められる出口を置く | 趣味や副業の活動を続ける配偶者の異性関係をめぐる誓約書 |
| 判断留保型 | 配偶者は婚姻を続けるかどうかの最終判断を留保し、誓約の履行の状況を見て判断する。慰謝料の請求権の留保は、許したことや婚姻の継続を確約したことを意味しない | 不貞の後に婚姻を続けるかどうかの判断を留保した誓約書 |
| 相手ごとの違約金型 | 本件の相手方との関係についての違反と、第三者との不貞行為とで、違約金の条を分ける | 配偶者の不適切な関係をめぐる夫婦間の誓約書 |
判断留保型の誓約書は、当初の案では「婚姻関係を継続し、修復を目指す」と書いていたものを、納品版で「配偶者は婚姻を継続するか否かの最終判断を留保し、履行状況を見て判断する」に変えたものです。被害を受けた側が、まだ許すと決めたわけではない、という気持ちをそのまま書面にする書き方で、慰謝料の請求権の留保も、許したことを意味しないと明記しています。請求権の留保の書き方は清算条項と請求権の留保のページで扱います。
婚姻を続ける夫婦の誓約書に、将来離婚した場合の条件まで書いておきたいというご相談もあります。趣味や副業の活動を続ける配偶者の誓約書では、違反の段階とは別に、離婚した場合の親権・養育費・面会交流・慰謝料・財産分与・年金分割について事前に合意し、違約金・養育費・慰謝料について公正証書にすることへの協力の義務も置きました。ただし、親権や面会交流のように子の利益が優先される事項は、離婚の時の協議や家庭裁判所の手続が優先することを明記しています。事前の合意でどこまで決められるかは誓約書で約束しても効かないこと、婚姻中の合意を公正証書にする方法は離婚協議書・養育費と公正証書のページで扱います。
守れない約束は書かない:立会人・根拠条文・スマートフォンの確認
夫婦間の誓約書では、依頼者の思いが強いほど、約束を厳しくしたくなります。けれども、守れない約束を書くと、最初の小さな違反で誓約書全体の信用が落ちます。ギャンブルの誓約書では、事務所は「守れない約束は書かない」という方針をとり、家族で楽しむ娯楽の例外も最初の誓約書には入れず、関係が修復した後に、双方の合意で追記できるとしています。
誓約書に根拠となる条文を掲げる例もあります。立会人つきの誓約書では、夫婦の協力の義務を定める民法752条(夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない)を根拠として掲げました。この誓約書では、給与の受け取りを確かめられる親族が立会人として署名しています。立会人は誓約書の当事者ではなく、誓約がされたことを見届ける立場です。立会人を置くときは、立会人が何を確認する人なのか(署名の場に立ち会ったことだけか、その後の記録の確認まで関わるのか)を書いておきます。
スマートフォンの確認に応じる約束も、よくご相談をいただく項目です。婚姻を続けるかどうかの判断を留保した誓約書では、確認に応じる範囲を「合理的な範囲で」と限定しました。いつでも、どこまでも見せるという約束は守れず、確認のたびに新たな争いが起きます。確認の対象(特定のアプリのやり取りなど)や頻度を決めるか、「合理的な範囲で」と限定しておくのが、守れる約束にするための書き方です。
ヒヤリングの問い 夫婦間の誓約書を作るために
何があったとき、何をしたら「違反」としたいですか。
この問いで決まること行為準則を号に分けて書き、外から確かめられる形にできるかが決まる。
配偶者の仕事や生活の上で、どうしても避けられない接触や支出はありますか。
この問いで決まること守れる線の引き方(目的の限定、アカウントの特定、事前の相談)が決まる。
違反があったとき、すぐに離婚を考えますか、それとも段階を踏みますか。
この問いで決まること段階型にするか、判断留保型にするか、違約金をどの段階で発生させるかが決まる。
お金の流れを確かめる方法はありますか(通帳、明細、記録簿)。
この問いで決まること記録開示型の条や、管理の委託の条の書き方が決まる。
立会人として署名してもらえる親族はいますか。
この問いで決まること立会人の欄を設けるか、立会人に何を確認してもらうかが決まる。
夫婦間の誓約書で起きがちなこと
夫婦間の誓約書は、相手を罰するための書面ではなく、関係を立て直すための書面です。事務所は、守るべき行為を外から確かめられる形にし、違反したときの段階と出口を書き、守れない約束は入れない、という三つの方針で組み立てています。そのうえで、関係が修復に向かったときには、双方の合意で約束を緩めたり追記したりできることを書いておきます。誓約書を、一度署名したら終わりの書面ではなく、夫婦がこれからの話合いを続けるための土台にするためです。違反の有無を確かめる資料(明細、記録簿、アカウントの一覧など)を、誰がどこに保管するのかも、署名の前に決めておくと安心です。不貞の相手方との書面を別に作る場合は、書面の種類と当事者の組み方のページもあわせてご覧ください。
よくあるご質問
夫婦間の誓約書は、後から取り消せるのですか?
夫婦間の契約を婚姻中いつでも取り消せると定めていた民法754条は、令和6年法律第33号により削除され、2026年4月1日に施行されました。夫婦であることを理由に一方の意思だけで取り消すことはできません。ただし、詐欺や強迫による取消しなどの一般のルールは働き、離婚の約束のように効力が認められにくい約束もあります。
ギャンブルや浪費の再発防止に、どんな措置を書けますか?
事務所の書類では、収入の管理の委託と通帳等の開示・預託、一定額を超える支出の事前の相談、業界団体の入店制限の仕組みの利用の申請、必要なときの専門機関の受診、通帳や明細を開示させて確認する記録開示型の条などを書いています。
誓約書に立会人や親族の署名は必要ですか?
必須ではありません。事務所の書類には、給与を現金で受け取る場合に合わせて、給与の受け取りを確かめられる親族に立会人として署名してもらった例があります。立会人を置くなら、立会人が何を確認する人なのかを書いておきます。
スマートフォンの確認に応じる約束は書けますか?
書けますが、いつでもどこまでも見せるという約束は守りにくく、確認のたびに新たな争いを生みます。事務所の書類では「合理的な範囲で」と限定した例があります。確認の対象や頻度を決めておく方法もあります。
違反したらすぐに離婚する、と書くべきですか?
離婚に応じる約束そのものは効力が認められにくく、事務所では違反時に誠実に協議に応じる意向の表明にとどめています。婚姻を続ける夫婦の誓約書では、活動の休止、家族を交えた話合い、違約金という段階と、関係を立て直す出口を書く形をとることがあります。
あわせて読みたい、関連する別のガイド
- 借用書と金銭消費貸借契約書お金の貸し借り・債権の契約書ガイド
- 公正証書(強制執行認諾)にするときお金の貸し借り・債権の契約書ガイド
あわせて読みたいページ
本ページは一般的な情報提供です。個別の書面への当てはめは、当事者の関係や事実の経過によって結論が変わることがあります。事務所の改訂例・ご相談の事例として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・改訂・レビューしてきた不貞の示談書(二者間・三者間)、夫婦間の誓約書・合意書、相手方の差入れ誓約書、交際・婚約・内縁の解消の示談書と合意書、離婚協議書と公正証書の原案、認知と養育費の合意、刑事事件になりうるトラブル・SNS上の被害の示談書、内容証明・通知書、事実関係整理メモ、ヒヤリングシート等に基づき、当事者が特定できないよう一般化しています。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月17日)。参考: e-Gov法令検索