内容証明・通知書の作り方と、行政書士の関与の範囲

通知書は、ご本人の名前で、ご本人の意思を伝える書面です。書く事実と書かない事実、求めることと期限、差出人の表示を一つずつ決めます。

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事務所の名前が入った通知書を見た相手方が、事務所を交渉の相手だと受け取らないよう、表示と注記を工夫します。

このページの要点

  • 差出人はご本人。行政書士は書面の作成と使者としての発送の手続までで、交渉や代理はできない(弁護士法72条)。
  • 請求の通知書は、資料の中身を書かず、権利を留保し、支払と回答の二段構えの期限を置く。
  • 接触の自粛を求めるなら、ブロック・履歴の削除・通知の存在を配偶者に伝えないことまで求める。
  • 消費者として出す通知書は、相手方の規約の条項を根拠にし、回数や時系列を分けて書く。

結論:通知書は本人の名前で出し、書く事実・求めること・期限・書かないことを決める

示談書を交わす前に、こちらの意思を相手方に伝える書面が、通知書です。送る方法としては、差し出した文書の内容と差出しの日付を郵便局が証明する内容証明郵便がよく使われ、配達証明を付けると相手方に届いた日付も記録に残ります。不貞の相手方への慰謝料の請求、配偶者の交際相手への接触の自粛の要請、退会した後も続く引落しの返金の請求など、個人間のトラブルでは、通知書が最初の一歩になることがよくあります。

通知書は、差出人であるご本人の名前で出すのが基本です。行政書士法1条の3は、行政書士の業務を、依頼を受け報酬を得て官公署に提出する書類や権利義務・事実証明に関する書類を作ることと定め(1項)、他の法律で制限されている業務はできないとしています(2項)。そして弁護士法72条は、弁護士や弁護士法人でない者が、報酬を得る目的で、法律事件について代理や和解などの法律事務を扱うことを業とすることを禁じています。事務所が関われるのは、ご本人の意思を正確に伝える書面を作ることと、ご本人の書面を届ける役割(使者)としての発送の手続までで、相手方との交渉や、ご本人に代わっての説明はできません。

このページでは、不貞の相手方への請求の通知書、接触の自粛を求める通知書、消費者として出す通知書、取引の終わりを告げる通知、事実関係の整理メモと証拠の索引、差出人の表示と事務所から発送するときの扱いを、事務所の書類から整理します。通知書の後に交わす示談書の組み立ては書面の種類と当事者の組み方のページで扱います。

不貞の相手方への請求の通知書

配偶者の不貞の相手方に慰謝料を請求する通知書では、何を書き、何を書かないかの判断が要になります。事務所が作成した通知書(ご本人の名義)では、改訂の中で次のような文言を加えました。

  • 客観的な資料を保有していること(資料の中身までは書かない)。
  • この請求は現時点のものであり、一切の権利を留保すること。
  • 連絡の履歴などの資料を破棄・改変しないよう申し添えること。
  • 支払の期限(到達後10日)とは別に、事情がある場合も含めて到達後5日以内の回答を求める、二段構えの期限。
  • 法的な措置を予告する場合に、遅延損害金や訴訟費用等の負担が生じ得ることを添えること。

二段構えの期限は、支払の期限を待つ間に相手方から何の反応もないまま時間が過ぎるのを防ぐためのものです。支払えない事情があるならそれも含めて先に回答を、という形にすることで、相手方の側からも事情を伝える道を用意します。資料の中身は書かず、保有している事実だけを示します。資料を破棄・改変しないよう申し添える一文は、相手方の手元にある資料の保全を求めるものです。

通知書を出す前に依頼者の方針が変わることもあります。この案件では、依頼者が離婚する方針になったため、改訂版で、接触の中止を求める部分と、「不貞行為が継続する場合」という文言を削りました。離婚を前提にするなら、関係の継続を前提にした要求は意味を失うためです。離婚した後に元配偶者の不貞の相手方へ請求する通知書でも、婚姻を続けている間の書きぶり(子の存在や、健康への影響の具体的な記載)だった原案を、修正版で「現在は離婚に至っている」という前提に書き換え、症状の記載を一般的な表現に改めています。この通知書では、慰謝料の支払が確認されれば、謝罪文や接触の禁止などの追加の措置は求めない、と書かれています。求めることを絞ることで、相手方が応じやすくする書き方です。

「現時点の請求であり、一切の権利を留保する」という一文にも役割があります。通知書で一定の額を請求すると、相手方は、その額を払えばすべてが終わると受け取りがちです。けれども、通知書を出した時点では、まだ把握していない事実があるかもしれず、相手方の回答次第で請求の内容を見直す必要が出てくることもあります。権利を留保する一文を置いておけば、通知書の請求額が最終の額であるとか、それ以外の請求を手放したと受け取られることを防げます。示談書で清算するまでは、何も終わっていないことを書面の上で示しておく書き方です。

法的な措置の予告をどう書くかも、通知書の強さを決める要素です。事務所の通知書では、期限までに支払がない場合に法的な措置をとることがあると予告するにとどめ、その際に遅延損害金や訴訟費用等の負担が生じ得ることを添えています。予告は、ご本人がとり得る正当な権利行使の手段を伝えるものです。事実と異なることや、とるつもりのない措置を書いて相手方を不安にさせる書き方はしません。通知書は、後に第三者の目に触れることもある書面で、言葉の強さよりも、事実と求めることが正確に書かれていることが大切です。

ヒヤリングの問い 請求の通知書を作るために

  1. 通知書の差出人は、どなたの名義にしますか。

    この問いで決まることご本人の名義で出すことを前提に、差出人の表示が決まる。

  2. 相手方に開示してよい事実は、どこまでですか。

    この問いで決まること通知書に書く事実の範囲と、資料の中身を書かない書き方にするかが決まる。

  3. 回答の期限と、支払の期限をどう設定しますか。

    この問いで決まること二段構えの期限にするか、期限の日数が決まる。

  4. 通知書のトーンは、穏当にしますか、強めにしますか。

    この問いで決まること法的な措置の予告の書き方と、要求の言い回しが決まる。

  5. 配達証明を付けますか。

    この問いで決まること相手方に届いた日を証明できるようにするかが決まる。

接触の自粛を求める通知書

配偶者の交際相手に、配偶者との接触を控えるよう求める通知書もあります。事務所が作成した通知書では、接触の自粛を求めたうえで、修正版で、連絡先を削除するだけでなくブロックの設定をすること、やり取りの履歴を削除すること、そして通知があったことを配偶者に伝えないことを求めました。「このような通知が届いたが」と配偶者に連絡すること自体も、間接的な接触とみなす、と書いています。

法的な措置についての書き方は、「検討せざるを得ない可能性がある」という、やわらかな予告にとどめました。接触の自粛を求める段階の書面として、強い言葉を避けた書き方です。差出人については、差出人の連絡先とともに、作成代行者として事務所の名前と法人番号を表示し、「この通知書は通知人本人の依頼に基づき作成されたもので、代理・交渉等を目的としたものではない」と注記しました。差出人が国外に住んでいる場合は、国内に滞在するときの住所を表示する方法をとっています。

文例

通知書の末尾の表示(例)

通知人 (住所) (氏名)

作成代行者 アトラス行政書士法人

本通知書は、通知人本人の依頼に基づき作成したものであり、通知人の代理又は相手方との交渉を目的とするものではありません。本通知書に関するご連絡は、通知人本人に対して行ってください。

作成代行者の表示は、書面を作った者を明らかにするためのものです。事務所が当事者として相手方に何かを求めたり、相手方との窓口になったりするものではないことを、注記で示します。

消費者として出す通知書:退会後の引落し・申込みのない請求・申込みの撤回

個人間のトラブルには、事業者との間で、消費者の立場から出す通知書もあります。ジムを退会した後も会費の引落しが続いた件の通知書では、当初の案では、民法の意思表示の規定や消費者契約法を根拠に、退会は有効であり、引落しの根拠となる条項は無効になり得る、と書いていました。最終版では、相手方の利用規約の条項(一定期間来店しない場合は退会扱いとする条項)を引用して退会の日を主張し、その規約は相手方自身が送ってきたものであるという事実で裏付ける構成に差し替えています。相手方が自分で定め、自分で送ってきた規約は、法律の解釈を争うより、相手方にとって反論しにくい根拠になります。

同じ通知書では、カードの明細で確認できる引落しの回数と、相手方が請求している回数を分けて書き、再度の精査を求めました。今後の連絡は、返金の完了と謝罪の書面の郵送に限る、とも書いています。窓口に直接持参して送付する版のほか、インターネットで差し出す内容証明(e内容証明)の字数・行数の書式に合わせた版も作られています。

消費者として出す通知書の例

通知の内容書き方の要点期限・連絡の扱い
退会後の引落しの返金請求と請求の拒絶相手方の規約の条項を引用して退会の日を主張し、相手方が規約を送ってきた事実で裏付ける。明細で確認できる回数と請求の回数を分けて書く今後の連絡は、返金の完了と謝罪の書面の郵送に限る
申込みのない資格試験の受験料の請求の停止受験の意思表示も申込みもしていないことを書く再び請求があれば、法的な手段と消費生活センターへの連絡を検討すると書く
賃貸の申込みの撤回と契約金の返還入金の日、重要事項の説明の日、覚書による変更の申入れが受け入れられなかった経緯を時系列で書く到達後14営業日以内の返還の期限を置く

賃貸の申込みの撤回の通知書では、最終版で時系列が追加され、返還の期限が到達後14営業日以内とされました。何がいつ起きたかを時系列で並べると、読み手は経緯を追いやすくなり、こちらの主張の筋道も伝わりやすくなります。あわせて、原状回復の負担と連帯保証人の変更を申し入れる覚書の案も用意されています。通知書を出すと同時に、相手方が応じた場合に交わす書面も用意しておくと、話が進んだときにすぐ合意の形にできます。

申込みのない受験料の請求の停止を求める通知書は、二つの団体それぞれに宛てて作られています。同じ内容でも、宛先ごとに書面を分け、それぞれの団体から届いた請求の内容に合わせて事実を書く形です。消費者の立場から出す通知書では、相手方の窓口が分かれていることも多く、誰に宛てて送るのかを請求書や規約で確かめてから宛先を決めます。

取引の終わりを告げる通知と、データの消去の証明書

取引の解除を伝える通知書もあります。業務の受注者が業務委託契約を解除する通知書では、作業を済ませた分の報酬請求権を放棄すること、解除した後に追加の納品などの義務を負わないことを確認する内容とし、あわせて、データの消去・破棄の証明書を作りました。証明書には、消去の対象(原素材、派生データ、関連データ)、消去の方法、第三者に提供していないこと、今後利用しないことを書いています。取引を終わらせるときは、お金と物だけでなく、手元に残ったデータの扱いまで書面で区切っておくことが、後の紛争の予防になります。

相手方の行為が犯罪に当たるかもしれない場面で通知書を出す場合も、通知書で求めるのは、あくまでご本人の権利に基づく支払や行為です。被害届や告訴の扱いを支払と結び付けるような書き方は、示談書の段階で、刑事処分を拘束しないことを明記したうえで条文にします(刑事事件・SNSのトラブルの示談書のページを参照)。

通知人が国外の法人である場合に、登記上の本店の所在地を本文に書いた例もあります。差出人が国外に住む個人である場合に国内に滞在するときの住所を表示するのと同じく、通知人が誰なのかを、相手方が書面だけで確かめられるようにしておくためです。差出人の表示を見れば、誰の請求で、誰が書面を作り送ったのかが分かる形にしておくことが、相手方が事務所を交渉の相手と誤解しないための第一歩です。

事実関係の整理メモと、証拠の索引

通知書や示談書を作る前に、事実関係を一枚の書面に整理することがあります。事務所が作成した居住用の賃貸の退去の清算(借主側)の事実関係整理メモは、当事者、物件、契約と金銭の概要、時系列、争点(10項目)、法的な評価、証拠の索引、業務の範囲についての留意事項、対応の方針、という構成でした。

事実関係整理メモに入れた項目

  • 当事者と物件、契約の内容と金銭の概要。
  • 時系列(いつ、何があったか)。
  • 争点の一覧と、それぞれについての法的な評価。
  • 証拠の索引。写真の番号と対応させ、「暫定の整理であり、正式に提出する際に確定・採番する」と注記する。
  • 業務の範囲の留意事項。行政書士はこのメモ、合意書の案、ご本人名義の通知書の作成までを行い、報酬を得て示談の交渉や代理の交渉をすることはできないこと。
  • 対応の方針。

このメモとあわせて作った退去の清算の合意書の案では、冒頭に「行政書士が作成した草案であり、金額・日付・当事者の欄は確定した後に補充する」と、末尾に「相手方が応じるかどうかは当事者間の協議による」と注記しました。草案の段階の書面が、確定した合意のように扱われたり、事務所が相手方との交渉を引き受けたかのように受け取られたりしないための注記です。事実を整理する書面を先に作っておくと、通知書に書く事実と書かない事実の線引きも、示談書の事実確認の条の範囲も、同じ整理の上で決められます(事実確認・謝罪の条項のページを参照)。

通知書と示談書の役割の違いも押さえておきます。通知書は、差出人が一方的に自分の意思を伝える書面で、相手方の同意は要りません。示談書は、双方が署名して初めて成立する合意の書面です。内縁の解消の案件のヒヤリングシートでも、相手方の同意の状況を伺い、双方が合意する「示談書」にするか、こちらから意思を伝える「通知書」にするかを選ぶ問いを置いていました。相手方がまだ話合いに応じていない段階で示談書の案だけを送っても、署名は得られません。まず通知書で事実と求めることを伝え、相手方の回答を受けてから示談書の案を作る、という順番が、多くの事案で自然です。通知書に書いた事実の範囲や期限は、その後の示談書の事実確認の条や支払の条の土台になります。

通知書を送る前に確かめること

  • 差出人はご本人の名義になっているか。事務所の名前を表示する場合、作成代行・作成送付代行の別と、代理・交渉を目的としない旨の注記があるか。
  • 相手方に開示してよい事実の範囲を超えて書いていないか。資料の中身まで書いていないか。
  • 依頼者の方針(婚姻を続けるか、離婚するか)の変化が、要求の内容に反映されているか。
  • 支払の期限と回答の期限、期限を過ぎた場合の対応が書かれているか。
  • 権利を留保する一文があるか。
  • 配達証明を付けるか、窓口で差し出すか、インターネットで差し出すかを決めているか。

差出人の表示と、事務所から相手方へ送るとき

通知書や示談書の案を相手方に送るとき、差出人を誰と表示するか、事務所がどこまで関わるかは、とくに慎重に決める点です。事務所の書類に見られる表示は、次のとおりです。

差出人の表示と、事務所の関わり方

表示書き方事務所の役割
本人名義差出人はご本人。事務所の名前は出さない書面の作成まで
作成代行者の表示差出人はご本人。末尾に作成代行者として事務所名と法人番号を表示し、代理・交渉を目的としない旨を注記する書面の作成まで。相手方からの連絡はご本人が受ける
作成送付代行の表示「(依頼者)の依頼により作成送付代行」として事務所名を表示する書面の作成と、使者としての発送の手続まで

事務所から相手方へ書面を発送することはできますが、その場合も、差出人はご本人の名前で、事務所は発送の手続だけを行います。事務所のヒヤリングシートでも、「事務所から相手方へ発送できるが、差出人は依頼者本人の名前、事務所は発送の手続のみ(交渉・説明はできない)」と明記しています。ここで大切なのは、二つのことをセットで伝えることです。差出人はご本人であること、そして、事務所はご本人の意思を伝える使者として発送の事務を行うだけであること。事務所が「書面を届ける立場として」相手方に何かを説明したり求めたりする形をとると、当事者のように交渉に関わっている外観ができてしまいます。反対に、「一切発送できない」とお伝えするのも、正確ではありません。

三者間の示談書のご説明書でも、事務所は依頼者のご意思を伝える使者にとどめ、当事者的に交渉や説明をする外観を作らないよう注意する、と記載しました。相手方から事務所に問合せがあった場合も、内容についての説明や条件のやり取りはご本人にお願いすることになります。署名の前に相手方に新しい条件を提案したいときも、提案はご本人から直接伝えていただきます。

内容証明・通知書で起きがちなこと

通知書は、相手方が最初に目にする書面で、その後の話合いの空気を決めます。事務所は、書く事実と書かない事実、求めることと期限、差出人の表示を依頼者と一つずつ確かめ、ご本人の意思を正確に、過不足なく伝える書面にすることを心がけています。通知書の後に示談がまとまれば、接触禁止や清算の条を備えた示談書に進みます。接触の禁止の書き方は接触禁止の条項のページで扱います。

よくあるご質問

内容証明は、行政書士の名前で出せますか?

通知書の差出人は、ご本人の名前にするのが基本です。事務所の書類では、ご本人名義のほか、作成代行者として事務所名を表示し代理・交渉を目的としない旨を注記する形や、「依頼により作成送付代行」と表示する形があります。いずれも、事務所の役割は書面の作成と使者としての発送の手続までで、相手方との交渉はできません(弁護士法72条)。

不貞の相手方に内容証明を送るとき、何を書き、何を書かないべきですか?

事務所の通知書では、客観的な資料を保有していること(中身は書かない)、現時点の請求で権利を留保すること、資料を破棄・改変しないよう申し添えること、支払の期限と回答の期限の二段構え、法的な措置の予告とその際の費用の負担を書いています。

相手方の規約を根拠にするのと、法律を根拠にするのとでは、どちらがよいですか?

事案によりますが、事務所が扱った退会後の引落しの返金請求の通知書では、法律の解釈を根拠にした当初の案から、相手方の規約の条項を引用し、相手方自身が規約を送ってきた事実で裏付ける構成に差し替えられています。相手方が自ら定めた規約のほうが、反論しにくい根拠になります。

事務所から相手方に書面を送ってもらうことはできますか?

できます。ただし、差出人はご本人の名前とし、事務所はご本人の意思を伝える使者として発送の手続だけを行います。相手方への説明や交渉はできないため、相手方からの問合せにはご本人に対応していただきます。

事実関係整理メモや証拠の索引は、何のために作るのですか?

当事者、時系列、争点、証拠を一枚に整理しておくと、通知書に書く事実と書かない事実の線引きや、示談書の事実確認の範囲を同じ整理の上で決められます。事務所のメモでは、証拠を写真の番号と対応させ、暫定の整理であることを注記しています。

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