このページの要点
- クーリング・オフは理由を書かず、契約の特定と撤回・解除の意思を書く。取消しは、理由に当たる事実を具体的に書く。
- クーリング・オフは通知を発した時に効力を生じ、取消しは原則として相手に届いた時に効力を生じる。
- 個別クレジットは販売店とクレジット会社の両方に書面で通知し、カード払いは支払停止の抗弁を使う。
- 通知書は評価や感想でなく、日付と事実で組み立て、控えと送った記録を残す。
結論:「期間内に無条件でやめる」のか、「理由があって取り消す」のかを先に分ける
契約をやめたいとき、通知書の書き方は、どの道を選ぶかで変わります。道は大きく三つあります。ひとつめは、クーリング・オフ。決められた期間内なら、理由を問わず、契約の申込みの撤回や契約の解除ができる制度です。ふたつめは、取消し。勧誘のときに事実と異なる説明をされた、帰ってほしいと言ったのに帰ってもらえなかったなど、契約の意思表示に問題があったことを理由に、契約を最初からなかったことにするものです。みっつめは、商品の欠陥などを理由にした解除や、修理・交換の請求です。三つとも「契約をなかったことにする」「お金を返してもらう」という結果は似ていますが、通知書に書く内容は大きく違います。クーリング・オフの通知書には理由を書く必要がなく、取消しの通知書には理由が必要です。通知書、示談書、合意書、誓約書がそれぞれ何のための書面なのかは示談書・誓約書・合意書の違いと当事者の組み方のページで整理しています。クーリング・オフや取消しの通知書は、相手方に自分の意思を一方的に伝える書面で、相手方と約束を交わす合意書とは性質が違います。
このページは、消費者の立場でご自身の意思表示を書面にするときの、書き方を扱います。どの取引にクーリング・オフが当たるのか、取消しができるのかという個別の判断は、契約の内容や勧誘の経緯によって変わります。ここでは、制度の仕組みと、通知書に何を書くか、どう送るかを説明します。事業者が通知に応じないときの交渉は、扱いません。契約の相手方に通知を出すための郵便の形式(内容証明の字数・行数など)は内容証明郵便の形式と出し方、退会後の引落しなど、ここで扱わない消費者の通知書は内容証明・通知書の作り方のページで扱っています。
契約をやめる三つの道と通知書の違い
| 道 | 根拠の例 | 通知書に必要なこと | 期間の目安 |
|---|---|---|---|
| クーリング・オフ | 特定商取引法(訪問販売は9条、電話勧誘販売は24条など) | 契約を特定して、申込みの撤回または契約の解除をする旨。理由は要らない | 法定書面を受け取った日から8日または20日(取引の類型による) |
| 取消し | 消費者契約法4条、特定商取引法9条の3など、民法95条・96条・5条2項 | 契約を特定して、どの事実があったかと、取り消す旨 | 取消しの理由により、追認できる時から1年または5年など |
| 解除・追完請求 | 民法541条・542条、562条以下 | 契約を特定して、不具合の内容と、修理・交換または解除を求める旨 | 種類・品質の契約不適合を知った時から1年以内の通知(民法566条)など |
期間の数字は、条文に書かれた原則です。個別の取引で当てはまるかは、取引の類型、法定書面の受領、勧誘の事情によって変わります。
クーリング・オフが使える取引と、期間の数え方
クーリング・オフは、すべての契約にあるわけではありません。特定商取引に関する法律(以下、特商法)が、トラブルの起きやすい取引を類型に分けて、類型ごとに定めています。主なものは次のとおりです。
特商法のクーリング・オフの主な類型と期間
| 取引の類型 | 条文 | 期間(書面を受領した日から) | ひとこと |
|---|---|---|---|
| 訪問販売(営業所等以外の場所で申込みを受けるなど) | 9条1項 | 8日 | 自宅への訪問のほか、喫茶店などで契約した場合もこの類型に入りうる |
| 電話勧誘販売 | 24条1項 | 8日 | 電話で勧誘を受け、郵便等で申込みや契約をする場合 |
| 特定継続的役務提供(エステ、語学教室、学習塾、家庭教師、パソコン教室、結婚相手紹介サービス、美容医療) | 48条1項 | 8日 | 政令で指定された役務に限られる。当たるかどうかは契約の中身で判定する |
| 連鎖販売取引(いわゆるマルチ商法) | 40条1項 | 20日 | 店舗等によらないで事業を行う個人が対象。特定負担が再販売する商品の購入で、最初の商品の引渡しが書面の受領より後のときは、その引渡しの日から数える |
| 業務提供誘引販売取引(内職・モニター商法など) | 58条1項 | 20日 | 事業所等によらないで業務を行う個人が対象 |
| 訪問購入(自宅などで物品を買い取る取引) | 58条の14第1項 | 8日 | 物品の引渡しを拒める規定もある(58条の15) |
通信販売(インターネットや通信で申し込む購入)には、クーリング・オフはありません。商品の引渡しを受けた日から8日以内の返品について、販売業者が広告で返品の可否などを表示していなければ、購入者が返品できる、という別の定めです(同法15条の3)。返品の特約が広告に表示されているときは、その表示が優先します。この返品の送料は購入者の負担です(同条2項)。
期間は、「法定書面(契約の内容を記した書面)を受領した日」から数えます。訪問販売の条文(9条1項ただし書)は、申込者等が書面を受領した日から起算して8日を経過した場合を除いて、クーリング・オフができると書いています。つまり、法定の書面を受け取っていなければ、8日の計算はそもそも始まっていない形になっています。受け取った書面に、事業者の名前や契約内容、クーリング・オフの方法が正しく書かれているかを確かめるのも、通知書を出す前の大事な作業です。事業者が「クーリング・オフはできない」と事実と異なることを告げたり、威迫したりしたために、申込者等が期間内に通知を出せなかった場合は、事業者がクーリング・オフができる旨を書いて交付した書面を受け取った日から8日を数える形になっています(同条ただし書の括弧書き)。
法定書面は、申込者の承諾を得て、書面の交付に代えて電磁的方法(電子メールなど)で提供されることがあります(特商法4条2項、5条3項)。その場合も、提供を受けた日が数え始めの基準になります。
また、事業者のために営業として契約する場合は、この規定は適用されません(特商法26条1項1号)。個人事業主でも、営業のための契約であれば、訪問販売や電話勧誘販売の規定が使えないことがあります。このほかにも、消費者の側から呼んだ訪問や、政令で定める消耗品を使用した場合など、訪問販売や電話勧誘販売のクーリング・オフが働かない場合が定められています(同条3項から7項まで)。取引がこれらに当たるかは契約の中身で判断します。
クーリング・オフの通知書:何を書き、どう送るか
クーリング・オフの通知書には、理由は要りません。必要なのは、どの契約の話なのかが相手に伝わることと、契約を撤回または解除するという意思がはっきり書かれていることです。次の項目を書きます。
- 契約を特定する情報:契約日、商品名またはサービスの名称、契約金額、販売会社の名称と担当者名(分かれば)。契約書面の写しが手元にあれば、その記載どおりに書きます。
- 撤回・解除の意思:「訪問販売(または電話勧誘販売など)による上記契約について、特定商取引法に基づき、契約の申込みを撤回します(または契約を解除します)」と、取引の類型と条文を添えて書きます。
- 支払済みの金額の返還と、引渡し済みの物の扱い:支払ったお金の返還を求めること、商品がすでに届いているときは、その引取りを求めることを書きます。引取りに要する費用は販売業者の負担です(特商法9条4項)。
- 差出人の情報と日付:氏名、住所、通知を発する日付。
通知書の文例(訪問販売の場合)
私は、貴社との間で○年○月○日に締結した下記契約について、特定商取引に関する法律第9条第1項に基づき、契約を解除します。
(契約の特定)商品名(サービス名):○○ 契約金額:○○円 契約担当者:○○
つきましては、私が支払った代金○○円を、本通知書の到達後、速やかに下記の口座に返金してください。また、商品が引き渡されているときは、貴社の費用負担で引き取ってください。
3つ目の項目の「到達後、速やかに」は、期限を書く場合は日数を入れます。期限を決めるかどうかは、通知書の書き方の問題で、事業者が応じなかったときの手段には触れません。
クーリング・オフの効力は、通知を「発した時」に生じます(特商法9条2項)。到達した時ではありません。これは、民法97条1項が原則とする「意思表示は到達した時から効力を生ずる」とは違う扱いです。期間の最終日に郵便ポストに投函すれば、期間内に通知を発したことになります。ただし、いつ発したのかを後で証明できなければ意味がありませんから、証拠が残る方法で出します。
通知の方法と、残る証拠
| 方法 | 内容 | 証拠として残るもの |
|---|---|---|
| はがき | 通知書を書いたはがきを、簡易書留で送る。送る前に、両面のコピーを取る | コピー、郵便局の受領印のある書留の控え、配達の記録 |
| 内容証明郵便 | 通知書の内容と、差し出した日付を郵便局が証明する。配達証明を付けると、届いた日付も記録に残る | 謄本、内容証明の受領証、配達証明書 |
| 電磁的記録(電子メールなど) | 法律上、「書面又は電磁的記録」による通知が認められている(特商法9条1項) | 送信したメールの保存、専用フォームの画面の記録 |
書留や内容証明の形式は、内容証明郵便の形式と出し方のページで扱います。
電磁的記録による通知については、消費者庁が公表している「特定商取引法における電磁的記録によるクーリング・オフに関するQ&A」に説明があります。電磁的記録には、電子メール、USBメモリ等の記録媒体、事業者のウェブサイトに設けられたクーリング・オフ専用フォームなどが当たり、FAXでのクーリング・オフも可能とされています。事業者が契約書面に通知方法を書いていることがあり、その場合は、書かれた通知先や通知方法に従うよう、消費者への助言として挙げられています。また、契約年月日、契約者名、購入品名、契約金額など契約を特定できる情報と、通知を発した日を書くこと、電子メールなら送信メールを保存し、専用フォームなら画面のスクリーンショットを残すことが、望ましいとされています。通知方法を、不合理に限定する書面の記載は、消費者に不利な特約として無効になると考えられています。
クーリング・オフがあったときの効果も、条文で定められています。事業者は、申込みの撤回等に伴う損害賠償や違約金を請求できません(特商法9条3項)。すでに商品が使われ、あるいはサービスが提供されていても、その使用の利益や、役務の対価その他の金銭の支払を請求できません(同条5項)。役務提供契約に関連して金銭を受領しているときは、事業者は速やかに返還しなければなりません(同条6項)。サービスに伴って土地や建物の現状が変更されたときは、原状回復に必要な措置を無償で請求できます(同条7項)。これらの規定に反する特約で、消費者に不利なものは無効です(同条8項)。通知書には、これらの効果を詳しく書く必要はありません。意思表示と、契約の特定と、返金の求めが書かれていれば足ります。
クレジットを使った契約:販売店への通知と、クレジット会社への通知は別に出す
代金を分割払いにした契約では、販売店とのあいだの契約のほかに、クレジット会社との契約があります。クレジットには大きく二つの形があり、通知書の書き方が変わります。割賦販売法は、これを「包括信用購入あっせん」と「個別信用購入あっせん」に分けています。包括信用購入あっせんは、カードなどを使って、特定の販売店から商品や役務を買うときに、代金を後払いにする形です(割賦販売法2条3項)。契約から2か月を超えない範囲で代金を受領するもの(翌月一括払いなど)は、同項1号の定義から除かれています。同項2号は、あらかじめ定められた時期ごとに合計額を基礎として算定した金額を受領する形(いわゆるリボルビング払い)です。個別信用購入あっせんは、カードを使わず、特定の販売店の商品や役務を条件に、クレジット会社が代金を立て替え、後で購入者から受領する形です(同条4項)。こちらも、契約から2か月を超えない範囲で受領するものは除かれます。
個別信用購入あっせんの場合、割賦販売法35条の3の10第1項が、一定の場合に、申込みの撤回等(クレジットの契約の申込みの撤回や解除)を、書面により行うことができるとしています。対象は、訪問販売や電話勧誘販売などに係る契約で、販売店との契約がクーリング・オフの対象になる場面です。期間は、クレジットの契約についての書面を受領した日から8日と定められています(連鎖販売取引など、期間の異なる類型は別の条で定められています)。効力は、書面を発した時に生じます(同条2項)。クレジット会社は、この書面を受領したときは、直ちに販売店にその旨を通知しなければなりません(同条4項)。つまり、個別クレジットを使った契約でクーリング・オフをするなら、販売店への通知と、クレジット会社への通知を、それぞれ別の書面として、同じ期間内に出すのが基本の形になります。この条文は「書面により」と書かれていますので、電子メールではなく、はがきなどの書面で出す形が確実です。
クレジットがあるときに、通知を出す先
| 支払の形 | 販売店への通知 | クレジット会社への通知 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 個別信用購入あっせん(個別クレジット) | 特商法のクーリング・オフの通知を出す | 割賦販売法35条の3の10の申込みの撤回等の書面を出す(書面) | どちらも発した時に効力が生じる。期間内に両方出す |
| 包括信用購入あっせん(カード払いの分割・リボなど) | 特商法のクーリング・オフの通知を出す | クーリング・オフそのものの規定はなく、支払の請求に対する抗弁(次の項)の問題になる | カード会社には、販売店との契約を解除したことを伝え、請求の扱いを確かめる |
自分の契約がどちらの形かは、契約書面やクレジットの申込書で確かめます。
カード払いなどの包括信用購入あっせんでは、販売店との契約を解除しても、カード会社からの支払の請求が止まるとは限りません。割賦販売法30条の4第1項は、購入者が、カード会社から支払の請求を受けたときに、販売店に対して生じている事由(契約の解除など)を、カード会社に対抗できるとしています(リボルビング払いは同法30条の5が前条を準用しています)。個別信用購入あっせんにも、同じ趣旨の規定があります(同法35条の3の19第1項)。これを、支払停止の抗弁、あるいは抗弁の接続といいます。いずれも、対抗するときは、カード会社などから事由の内容を記載した書面の提出を求められたら、書面を出すよう努めるものとされています(30条の4第3項、35条の3の19第3項)。また、支払総額が政令で定める金額に満たないものは対象から外れます(30条の4第4項、35条の3の19第4項)。カード会社に出す書面には、契約を特定する情報と、販売店との間で何が起きているか(クーリング・オフをした、取り消した、など)、支払を停止してほしいという申出を書きます。
取消しの通知書:理由に当たる「事実」を書く
クーリング・オフの期間が過ぎていたり、そもそもクーリング・オフの対象でない取引でも、契約を取り消せることがあります。取消しの通知書で大切なのは、取消しの理由に当たる事実を、できるだけ具体的に、客観的に書くことです。「だまされた」「ひどい勧誘だった」という評価ではなく、いつ、誰が、どこで、何を言ったのか、何をしたのかを書きます。
取消しの主な理由と、根拠
| 理由 | 根拠 | 通知書に書く事実の例 | 行使できる期間 |
|---|---|---|---|
| 重要事項についての不実告知 | 消費者契約法4条1項1号、特商法9条の3第1項1号など | 勧誘のときに、事実と違う内容を告げられ、それが事実だと信じて契約したこと | 追認できる時から1年、契約から5年(消費者契約法7条1項、特商法9条の3第4項) |
| 断定的判断の提供 | 消費者契約法4条1項2号 | 将来の価額など、変動が不確実な事項について、確実だと断定されたこと | 同上 |
| 不利益事実の不告知 | 消費者契約法4条2項 | 利益になることだけを告げられ、不利益になる事実を告げられなかったこと | 同上 |
| 困惑(退去しない・帰らせない等) | 消費者契約法4条3項1号・2号など | 帰ってほしい(または帰りたい)と意思を示したのに、そのようにされなかったこと | 同上 |
| 錯誤 | 民法95条 | 契約の基礎とした事情についての認識が真実に反していたこと。その事情が契約の基礎とされていることが表示されていたことが必要 | 追認できる時から5年、行為の時から20年(民法126条) |
| 詐欺・強迫 | 民法96条 | だまされた、または脅されて契約したこと | 追認できる時から5年、行為の時から20年(民法126条) |
| 未成年者の契約 | 民法5条2項 | 契約したとき未成年で、法定代理人の同意がなかったこと | 追認できる時から5年、行為の時から20年(民法126条) |
霊感等を用いた不安のあおり(消費者契約法4条3項8号)は、行使期間が3年・10年と長く定められています(同法7条1項)。表は主なものだけです。
表のうち、消費者契約法4条は、消費者と事業者の間の契約すべてに使えます。訪問販売や通信販売には、特商法に独自の取消しの規定もあります(特商法9条の3、15条の4など)。民法の取消しは、相手が事業者かどうかを問わず使える一般的な規定です。どれを理由にするかは、事実に基づいて決まります。通知書には、複数の理由を並べて書くこともできます。たとえば、不実告知と錯誤の両方が当たりうるときは、「消費者契約法4条1項1号及び民法95条に基づき」というように、根拠を重ねて書きます。
取消しの意思表示は、相手が決まっている場合、相手に対して行います(民法123条)。意思表示は、原則として到達した時から効力を生じます(同法97条1項)。クーリング・オフが「発した時」から効力を生じるのと違い、取消しは通知が相手に届いた時に効力が出ます。通知書は、届いたことの証拠が残る方法で出し、内容証明郵便に配達証明を付けると、内容と到達の日付の両方が記録に残ります。
契約が取り消されると、最初から無効であったものとみなされます(民法121条)。すでに受け取った商品や代金は、お互いに元に戻すことになります(同法121条の2第1項)。ただし、行為の時に制限行為能力者であった者(たとえば未成年者)は、その行為によって現に利益を受けている限度で返還すれば足ります(同条3項)。消費者契約法の取消しについても、給付を受けた当時、取り消すことができるものであることを知らなかったときは、現に利益を受けている限度で返還すれば足りるとされています(消費者契約法6条の2。特商法9条の3第5項も同じ趣旨です)。
通知書の文例(不実告知を理由にする場合)
私は、○年○月○日、貴社の担当者○○から勧誘を受け、○○について「○○」との説明を受けました。私は、この説明が事実であると信じ、貴社と下記契約を締結しました。
しかし、実際には、上記の説明は事実と異なっていました。そこで、私は、消費者契約法第4条第1項第1号に基づき、上記契約の申込みの意思表示を取り消します。
つきましては、私が支払った代金○○円を、本通知書の到達後、○日以内に下記の口座に返金してください。
「説明を受けた」内容は、受けた説明を、受けた通りに書きます。受けた説明を正確に書くために、勧誘のときの資料、メッセージ、録音などの手元の記録を、通知書を書く前に確かめておきます。
商品の欠陥や不具合を理由にするとき:契約をやめる前に、直してもらう段階がある
購入した商品に欠陥がある場合は、クーリング・オフや取消しとは別の道があります。引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求できます(民法562条1項)。追完を催告しても追完がないときは、不適合の程度に応じて代金の減額を請求できます(同法563条1項)。債務を履行しない相手方に対しては、相当の期間を定めた催告をして、その期間内に履行がなければ、契約を解除できます(同法541条)。ただし、催告期間を経過した時点の不履行が軽微なときは解除できません(同条ただし書)。追完が不能であるとき、売主が追完を拒絶する意思を明確に表示したときなどは、催告なしに解除できます(同法542条1項)。解除は、相手方に対する意思表示によってし、一度した意思表示は撤回できません(同法540条)。
種類又は品質に関する不適合については、買主が不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないと、追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求、契約の解除が、いずれもできなくなります(民法566条本文)。売主が引渡しの時に不適合を知り、または重大な過失によって知らなかったときは、この限りでありません(同条ただし書)。通知書は、不具合を見つけたら、まず「こういう不適合がある」という通知を出しておくのが、期間の面でも安全な書き方になります。
この場面の通知書は、段階を分けて書きます。最初の通知では、不具合の内容(いつ、何が、どう不具合なのか)を具体的に書き、修理または交換を求めます。そのうえで、相当の期間を定めて、その期間内の対応を求めます。解除の意思は、その期間が過ぎても対応がなかったときに、改めて通知するのが、段階を踏んだ形です。最初から「契約を解除します」と書くことは、期間を定めた催告をしていなければ、解除の要件を満たさないことがあります。
事務所の書類での扱い:通知書は事実と日付で組み立てる
事務所が扱った、消費者の立場から出す通知書の案件には、会員制サービスの退会後も引落しが続いた件、申込みの覚えのない請求の停止を求める件、賃貸の申込みを撤回して契約金の返還を求める件などがあります(内容証明・通知書の作り方のページで扱っています)。いずれも、クーリング・オフや取消しの通知書を書くときに、そのまま通じる共通点がありました。
見比べ 消費者が出す通知書の組み立て
根拠の立て方
民法の意思表示の規定や消費者契約法の条文を並べ、「退会は有効であり、引落しの条項は無効になり得る」と書く
相手方自身が定めて送ってきた規約の条項と、退会の意思を示した日付を書き、事実から結論を導く
理由条文の当てはめは、読み手によって評価が分かれる。事実と日付は、読み手が確かめられる。
経緯の書き方
契約金を支払ったこと、説明を受けたこと、変更を申し入れたことを、日付を並べずに書く
入金の日、説明を受けた日、変更の申入れをして受け入れられなかった経緯を、日付の順に並べる
理由時系列で並べると、読み手が経緯を追いやすくなり、通知書を出した側の主張の筋道も伝わりやすい。
期限と今後の連絡
返還の期限を書かない
返還の期限を、到達後の日数で定め、今後の連絡の方法(書面の郵送など)を書く
理由期限と連絡の方法が決まっていると、相手方が事務の流れの中で扱いやすい。
改訂後の書き方は、クーリング・オフでも取消しでも変わりません。クーリング・オフなら、契約の特定と日付と撤回の意思。取消しなら、契約の特定と、取消しの理由になる事実と日付、取り消す旨。事実と日付で組み立てれば、通知書が、のちに第三者の目に触れたときにも、そのまま読み手に伝わります。差出人は、ご本人の名義です。事務所は、書面の作成と、使者としての発送の事務までを行い、相手方との交渉や説明は行いません。
ヒヤリングの問い クーリング・オフ・取消しの通知書を作る前に
契約したのはいつ、どこでですか。自宅、店舗、電話、インターネットのどれですか。
この問いで決まること取引の類型。クーリング・オフが使える類型か、使えるなら何日か、が決まる。
契約書面や申込書は手元にありますか。受け取った日は分かりますか。
この問いで決まること期間の起算日と、契約の特定に使う情報(商品名、金額、会社名)が決まる。
代金は払いましたか。クレジットを使いましたか。使ったなら、カードですか、販売店で申し込む分割ですか。
この問いで決まることクレジット会社にも書面を出す必要があるか、支払停止の申出が必要か、が決まる。
勧誘のとき、何を言われましたか。どんな様子でしたか。記録は残っていますか。
この問いで決まること取消しの理由に当たる事実が何か、通知書に書く事実と、手元の記録が決まる。
商品はすでに届いていますか。使いましたか。
この問いで決まること引取りの求め方と、欠陥の通知(民法566条の通知)が必要かが決まる。
通知書を出す前に確かめるリスト
- 契約日、商品・サービス名、金額、販売会社の名称が、契約書面と一致しているか。
- クーリング・オフの期間の最終日はいつか。その日までに通知を発するか。
- 通知書に、理由が必要な道(取消し)なら、事実が客観的に書かれ、評価を書いていないか。
- クレジットを使っているとき、クレジット会社宛の書面も用意したか。
- 控えを取ったか。はがきなら両面のコピー、メールなら送信画面、書留や内容証明なら受領証。
- 通知書を出したことを知らせるつもりの、他人宛の不用意な書込みをしていないか。
事業者が通知を受けて返金に応じ、返金の方法や時期を書面で取り交わすことになったときは、その書面の作り方は解決金の受領確認・同時履行と、清算・請求権の留保のページの受領確認の書き方がそのまま使えます。
通知書を出す前に、お住まいの地域の消費生活センターなどの窓口を案内する、消費者ホットライン「188」があります。消費者庁が案内しているもので、番号は全国共通で、身近な消費生活センターや消費生活相談窓口につながります。通知書の書き方とは別に、契約の経緯や取引の類型を第三者に確かめてもらいたいとき、公的な窓口として利用できます。
クーリング・オフ・取消しの通知書で起きがちなこと
よくあるご質問
クーリング・オフの通知は、いつまでに出せばよいですか。
訪問販売、電話勧誘販売、特定継続的役務提供、訪問購入は、法定の書面を受け取った日から8日、連鎖販売取引と業務提供誘引販売取引は20日が原則です(特商法9条、24条、48条、58条の14、40条、58条)。通知は発した時に効力を生じますから(例:特商法9条2項)、期間の最終日に出せば足ります。書面を受け取っていなければ、期間の計算は始まっていない形になっています。取引がどの類型に当たるかは、契約の内容で決まります。
通信販売で買ったものは、クーリング・オフできますか。
通信販売にはクーリング・オフはありません。特商法15条の3は、商品の引渡しを受けた日から8日以内の申込みの撤回や解除を認めていますが、販売業者が広告に返品についての特約を表示していた場合は、その特約が優先します。購入前に、販売ページの返品に関する表示を確かめておきます。申込みを受けるに際して、事実と異なる表示がされたなどの場合には、特商法15条の4に取消しの規定があります。
クーリング・オフの通知を、メールで出してもよいですか。
特商法9条1項は、書面又は電磁的記録による通知を認めています。消費者庁のQ&Aでは、電子メール、USBメモリ等、事業者のウェブサイトのクーリング・オフ専用フォームなどが電磁的記録に当たり、FAXも可能とされています。契約書面に通知方法が書かれているときは、それに従うよう助言されています。個別クレジットの申込みの撤回は、割賦販売法35条の3の10が「書面により」と定めているため、書面で出すのが確実です。
クレジットで払った契約をクーリング・オフするとき、カード会社にも通知が必要ですか。
個別信用購入あっせん(販売店で申し込む分割払い)の場合は、割賦販売法35条の3の10に基づき、クレジット会社にも書面で申込みの撤回等をします。カード払いの分割などの包括信用購入あっせんは、クレジット会社へのクーリング・オフの規定はなく、販売店との契約を解除したことを伝えたうえで、支払の請求に対して抗弁を主張する形になります(同法30条の4)。契約書面で、どちらの形かを先に確かめます。
クーリング・オフの期間が過ぎてしまった契約は、もうやめられませんか。
クーリング・オフの期間が過ぎても、取消しや解除ができる場合があります。勧誘のときの不実告知や断定的判断、困惑させる行為があれば、消費者契約法4条や特商法9条の3などに基づく取消しが考えられます。商品に不具合があれば、民法562条以下の追完の請求や解除の道もあります。どの道が使えるかは、勧誘の事実や契約の内容によります。通知書には、取消しなら理由の事実、解除なら不具合の内容を具体的に書きます。
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