このページの要点
- 規約に禁止行為を列挙して措置と結びつけ、誓約書は規約の確認、本人確認、撮影の同意に絞る。
- 違約金は「予定」か「実損の賠償」かに一貫させ、額は行為の重さに応じて説明のつく範囲にする。
- 口コミは、虚偽、個人情報の公開、営業妨害の目的などに限って禁止し、感想や評価は禁止の対象にしない。
- 防犯カメラの映像は個人情報として、利用目的の特定、掲示、第三者提供の同意を整える。
結論:誓約書は「規約の言い直し」にせず、確認・本人確認・撮影の同意に絞る
サロンや店舗で、性的な言動をする、つきまとう、無断で撮影する、といった迷惑な来店客に悩まされたとき、事業者の側が事前に備える書面として、利用規約と誓約書があります。この二つは、役割が違います。利用規約は、どの来店客にも共通するルールを文章にして、来店前に示すものです。誓約書は、来店客に署名してもらう書面で(誓約書がどういう性質の書面かは示談書・誓約書・合意書の違いのページで扱っています)、規約を読んだこと、本人の情報が真実であること、防犯カメラなどの撮影に同意することといった、署名がある方が意味を持つ事項を確認するためのものです。誓約書の中に、規約と同じ内容を並べても、来店客が署名する負担が増えるだけで、新しい効果は生まれません。
この章で扱うのは、すでに起きた迷惑行為への請求や交渉ではなく、事前に取る規約と誓約書の条文設計です。条文を考えるときに押さえておく点は、四つあります。ひとつは、禁止する行為を具体的に列挙し、中断・退店・将来の利用拒否という措置と結びつけること。ふたつめは、違約金を書くなら、民法と消費者契約法の枠の中で書くこと。みっつめは、口コミや低評価の投稿を、全面的に禁止することはできないこと。よっつめは、防犯カメラの映像は個人情報であり、取得から提供まで個人情報保護法の枠の中で扱うこと。それぞれを、以下の章で順に見ます。
事務所が扱った、美容・リラクゼーションのサロンの案件では、来店客向けの利用規約(通常版と簡易版)と、来店客に署名してもらう誓約書が、組になって作られていました。同じ案件の誓約書は、規約を確認して同意すること、規約違反のときの措置を承諾すること、本人確認と申告事項が真実であること、防犯カメラと証拠利用に同意すること、という4つの条だけで構成されています。違約金や禁止行為の詳細は規約に置き、誓約書は確認と同意に絞る、という分担です。違約金の考え方そのものは違約金の設計のページで、禁止行為と接触の約束は接触禁止の条の設計のページで扱っています。
規約と誓約書の役割分担(サロンの例)
| 項目 | 利用規約 | 誓約書 |
|---|---|---|
| 誰に向けるか | すべての来店客に共通 | 来店客ひとりひとりが署名する |
| 置く内容 | 禁止行為の列挙、中断・退店・利用拒否、返金の扱い、違約金、口コミ、個人情報、規約の変更 | 規約の確認と同意、措置への承諾、本人確認と情報の真正性、防犯カメラと証拠利用の同意 |
| 示し方 | 予約画面、店内の掲示、書面の交付 | 初回の来店前に署名(紙または電子) |
| 長さ | 通常版は詳細。簡易版は予約画面や掲示向けに要点のみ | 1ページ程度 |
| 効力の根拠 | 定型約款(民法548条の2)としての組入れ、または契約内容としての合意 | 署名による個別の確認・同意 |
同じ規定を両方に書くと、改訂のときに片方だけ直し忘れる原因になります。
規約を契約の内容にする:来店したら同意したことになる、と書くだけでよいか
規約には、「予約、来店、施術の申込みその他、当サロンを利用する一切の行為をもって、本規約に同意したものとみなす」という一文を入れるのが通例です。民法548条の2第1項は、定型取引(ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引で、その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なもの)を行うことの合意をした者は、定型約款を契約の内容とする旨の合意があったとき、または定型約款を準備した者があらかじめその旨を相手方に表示していたときは、個別の条項についても合意したものとみなすと定めています。サロンの利用は、この定型取引に当たりうる取引です。したがって、規約を契約の内容にするためには、来店前、遅くとも契約の申込みの段階までに、規約を契約の内容とする旨を相手に表示しておく必要があります。予約のページ、来店時の受付、店内の掲示、いずれの方法でも、規約を読めることと、規約が適用されることを示しておくことが大切です。
ただし、民法548条の2第2項は、相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重する条項であって、取引の態様や実情、社会通念に照らして信義則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるものについては、合意をしなかったものとみなすとしています。過大な違約金、返金の全面的な否認、口コミ投稿の包括的な禁止などは、この規定でも問題になりうる内容です。規約は書けば有効になるわけではなく、書いた内容が、どの程度なら来店客にとって予測できる範囲かを意識して書きます。
規約の変更についても、定めがあります。民法548条の4は、定型約款の変更を、相手方の一般の利益に適合するとき、または契約をした目的に反せず、変更の必要性や内容の相当性などに照らして合理的であるときに、個別の合意なしにできるとしています。その場合、効力発生時期を定め、変更する旨と変更後の内容、効力発生時期をインターネットの利用その他の適切な方法で周知しなければならず、合理性を理由とする変更は、効力発生時期までに周知をしなければ効力を生じません(同条2項、3項)。「公表した時点で効力を生じる」とだけ書く規約は、この周知と効力発生時期の定めの要請に合うように書き改める必要があります。
迷惑行為の列挙と、中断・退店・将来の利用拒否
禁止行為の列挙は、規約の中心です。「迷惑行為をしてはならない」だけでは、何が迷惑行為なのかが分からず、措置をとるときに来店客と争いになります。事務所が扱った案件の規約は、次のように行為を類型に分けて列挙していました。
禁止行為を分けて列挙する(例)
| 類型 | 列挙する行為の例 | 措置との結びつけ方 |
|---|---|---|
| 性的な要求・言動 | 性的サービスや接触の要求・示唆、卑猥・性的な発言や質問、身体の特定部位への接触の要求 | 施術の中断、退店、将来の利用拒否。違約金を置くなら、この類型を最も重く扱うことが多い |
| 私的な関係の要求 | 連絡先の交換の要求、交際や店外での面会の要求 | 中断や退店。ここまで違約金の対象にするかは別に考える |
| つきまとい・監視 | 待ち伏せ、つきまとい、監視 | 同上 |
| 撮影・録音 | 無断撮影、無断録音、盗撮、盗聴 | 施術の中断、退店、将来の利用拒否。撮影データの消去の求め |
| 暴力・威圧 | 暴力、脅迫、威迫、強要、執拗な要求 | 直ちに施術を中断し、退店を求める |
| 営業上の迷惑 | 同業者による情報収集、営業ノウハウの取得、従業員の引き抜き | 利用拒否。調査目的の利用を表明保証で排除する書き方もある |
類型ごとに措置を決めておくと、現場の判断が速くなります。性的サービスを提供していない旨は、禁止行為の列挙より前に、規約の冒頭に書くほうが、来店客に伝わりやすくなります。
措置の条は、「事前の通知、催告その他の手続を要することなく、直ちに施術を中断し、予約を取り消し、退店を求め、又は将来にわたって利用を拒否することができる」という形で書かれることが多いのですが、ここには二つの注意があります。ひとつは、判断の基準を「合理的に判断した場合」とするなど、事業者の恣意的な判断だけで措置がとられない形にしておくこと。もうひとつは、すでに受け取った料金の扱いです。規約に「措置がとられた場合でも、既に受領した利用料金その他の金員を返還しない」と書く例がありますが、提供した施術の部分と、まだ提供していない部分を分けずに全額の返還を否定する書き方は、消費者契約法の観点から問題になりえます。消費者契約法10条は、民法などの任意規定の適用による場合に比べて消費者の権利を制限し、または義務を加重する条項であって、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものを無効としています。提供済みの施術の部分は返金しないが、未提供の部分は精算する、という分け方のほうが、説明がつきやすくなります。
措置に伴う責任の免除の書き方にも注意が要ります。「利用者は、これにより生じた損害について、サロンやセラピストに何らの請求を行わない」という条項は、事業者の債務不履行による損害賠償責任の全部を免除する条項や、その責任の有無を決定する権限を事業者に付与する条項として、消費者契約法8条1項1号に当たりうる形です(同法8条1項は、事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、またはその責任の有無を決定する権限を事業者に付与する条項を無効としています)。迷惑行為を理由とする措置であっても、措置そのものが規約に基づく正当なものであるなら、損害賠償責任が生じない場面は多いはずです。そうであれば、責任を全部免除すると書くのではなく、「規約に基づく措置については、損害賠償の責任を負わない」というように、免責の対象を限定した書き方のほうが、有効性の疑問を避けられます。
利用規約 第○条(施術の中断、退店及び利用の拒否)
1当サロンは、利用者が第○条に定める禁止行為のいずれかを行い、又は行うおそれがあると合理的に判断したときは、直ちに施術を中断し、予約を取り消し、退店を求め、又は将来の利用を拒否することができる。
2前項の措置をとった場合、当サロンは、提供済みの施術に相当する料金を除き、未提供の施術に相当する料金を、利用者に精算する。ただし、利用者が第○条(違約金)に定める支払義務を負うときは、その支払に充てることがある。
3当サロンは、前項の措置が本規約に基づくものである限り、その措置により利用者に生じた損害について責任を負わない。ただし、当サロンの故意又は重大な過失による場合は、この限りでない。
3項ただし書は、消費者契約法8条の枠を意識した書き方です。提供済みと未提供の区分、精算の方法は、サービスの内容に合わせて決めます。
違約金:額の考え方と、民法・消費者契約法の枠
迷惑行為への違約金は、事業者の側からは強い抑止力になりそうに見えます。けれども、来店客に違約金を書く場合は、ほかの契約よりも慎重に設計する必要があります。法律の枠は三つあります。
- 民法420条:当事者は債務の不履行について損害賠償の額を予定でき(1項)、違約金は賠償額の予定と推定されます(3項)。賠償額の予定とした以上、実際の損害がそれを超えても、原則として超過分を請求できません。「違約金とは別に、実際の損害の賠償も請求できる」と書くと、予定の性質と矛盾します。
- 民法90条:公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は無効です。違約金が、実際に生じうる損害に比べて著しく大きいときは、この観点からも問われえます。
- 消費者契約法9条1号・10条:9条1号は、消費者契約の解除に伴う損害賠償の額の予定や違約金のうち、同種の契約の解除に伴い事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える部分を無効とします。条文の対象は、契約の解除に伴うものです。迷惑行為に対する違約金は、解除に伴うものとして定められているのか、そうでないのかで、9条1号の適用の有無が分かれます。9条1号に当たらなくても、消費者の利益を一方的に害するものは、同法10条で無効になりえます。
事務所が扱った案件の規約には、行為の類型ごとに違約金の額を分け、類型の重さに応じて額に差をつける書き方がありました。額を段階に分けること自体は、行為の重さに応じた説明がしやすい作りです。他方で、規約には「実際の損害が違約金を超えるときは、超過額を別途請求できる」という一文が付いていました。この一文は、違約金を賠償額の予定とする以上、420条の考え方と衝突します。違約金を設けるなら、「予定とする」型にして超過請求を書かないか、「違約金を設けず、実際に生じた損害の賠償を請求できる」型にするか、のどちらかを選びます。
見比べ 違約金の条の書き方
違約金の性質
違約金は損害賠償額の予定とし、実際の損害が違約金を超えるときは、超過額を別途請求できる
違約金は損害賠償額の予定とする(超過請求の定めは置かない)、又は、違約金を設けず、実際に生じた損害の賠償を請求できると定める
理由予定とした場合、超過請求とは両立しにくい。どちらの型にするかを選び、条文の中で一貫させる。
額の定め方
行為の類型にかかわらず、一律の高額を定める
行為の類型ごとに額を分け、類型の重さに応じた説明ができる額にする
理由額が、実際に生じうる損害や行為の重大さと釣り合っているかを、説明できることが大切。
発生の単位
違反行為が続く限り、何度でも請求できる
違反行為1件ごとに発生すると書く。1件の数え方を定める
理由1件の数え方が決まっていないと、同じ出来事を複数件に数えたと争われやすい。
違約金の額の特定値は、サロンの料金、施術の時間、迷惑行為が営業に与える影響などで変わり、ここで一律の基準を示すことはできません。大切なのは、額を決めたときの理由を事業者が説明できることです。違約金の考え方の詳細は違約金の設計のページで扱っています。
口コミ・低評価の投稿は、禁止できる部分とできない部分がある
迷惑客のなかには、施術を断られた腹いせに、インターネットに口コミを書き込む人もいます。そのため、規約や誓約書に「口コミや低評価の投稿を禁止し、違反したら違約金」と書きたくなります。ここは、書き方に最も注意が要る部分です。来店客が、自分の受けたサービスについて感想や評価を述べることは、消費者の表現の自由に関わる行為です。事実に基づく感想や批判までを一律に禁止し、投稿したら違約金を払わせるという書き方は、消費者の権利を制限し、義務を加重する条項として、消費者契約法10条や民法548条の2第2項の観点から問題になりえます。
口コミ・投稿の条で、書けること・書けないこと
| 投稿の種類 | 禁止の可否 | 書き方の方向 |
|---|---|---|
| 虚偽・事実に反する内容 | 禁止の対象にしやすい | 「虚偽の内容」「事実を歪曲する内容」を対象と定める |
| 従業員の氏名・住所・電話番号・SNSアカウントの公開 | 禁止の対象にしやすい | 個人情報の公開を具体的に列挙する |
| 営業の妨害を目的とする投稿(嫌がらせ、報復を目的とする低評価) | 目的を要件にして禁止できる | 「営業を妨害する目的」を要件にし、評価そのものの禁止とは書かない |
| 事実に基づく感想・批判・低い評価 | 一律に禁止すると、有効性が問われやすい | 禁止の対象にしない。違約金とも結びつけない |
投稿の削除の依頼、実際に生じた損害の賠償は、規約がなくても法律上の手段として可能な場合があります。規約に書く意味は、禁止行為を明確にしておくことにあります。
規約に、「発信者情報開示請求」や「投稿削除請求」を行うことができると書く例もあります。こうした請求は、法律に基づく手続として、規約に書いてあるかどうかにかかわらず利用できるものです。規約に書く意味は、来店客に対して、事業者がそうした手段を持っていることを知らせる点にあります。書き方としては、「当サロンは、法令に基づく手続をとることがある」という、権利の確認にとどめるほうが、来店客に過度の萎縮を与えず、規約全体の説得力も保てます。口外禁止と投稿の書き分けは口外禁止・投稿の禁止・データの削除のページが詳しく扱っています。
防犯カメラと個人情報:撮影、保存、提供の三つの段階で考える
来店客の映像は、特定の個人を識別できるものであれば、個人情報です。迷惑行為の証拠として防犯カメラの映像を使うためには、撮影する、保存する、利用する、第三者に提供する、という段階ごとに、個人情報保護法に沿った扱いが必要です。
- 利用目的の特定:個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うにあたり、利用目的をできる限り特定しなければなりません(個人情報保護法17条1項)。規約には、「防犯、安全の確保、迷惑行為の防止、紛争への対応、証拠の保全」というように、目的を具体的に書きます。
- 利用目的の通知・公表:個人情報を取得したときは、あらかじめ利用目的を公表している場合を除き、速やかに本人に通知し、または公表しなければなりません(同法21条1項)。ただし、取得の状況からみて利用目的が明らかであると認められる場合は、この限りでありません(同条4項4号)。防犯カメラは、撮影中であることを入口に掲示するなどして、目的を示します。
- 目的外利用の制限:あらかじめ本人の同意を得ないで、特定した利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を取り扱ってはなりません(同法18条1項)。防犯のために撮影した映像を、無関係な宣伝に使うことはできません。
- 第三者への提供:個人データを第三者に提供するときは、法令に基づく場合などを除き、あらかじめ本人の同意が必要です(同法27条1項)。警察、弁護士、裁判所などに映像を提供する場合は、規約に提供することがある旨を書き、同意を得ておくか、法令に基づく場合などの例外に当たるかを個別に確かめます。
誓約書に防犯カメラへの同意の条を置く意味は、撮影と、その記録を、規約の定める目的で使うことについて、来店客に署名で確認してもらうことにあります。事務所が扱った案件の誓約書は、防犯、安全管理、迷惑行為の防止、紛争対応、証拠の保全その他の施設運営上必要な目的で、撮影、録画及び記録を行うことに同意し、記録が損害賠償請求などの権利保護のために使われうることを理解して同意する、という二つの項で構成されていました。誓約書では、同意の対象を、撮影の事実と利用の目的に絞ると、誓約書が読みやすくなります。
誓約書 第○条(防犯カメラ及び映像の利用への同意)
1私は、貴サロンが、施設内の安全の確保、迷惑行為の防止、紛争への対応及び証拠の保全のため、防犯カメラにより撮影、録画及び保存を行うことに同意します。
2私は、前項の記録が、貴サロン又はセラピストの権利を守るために必要な範囲で、損害の賠償の請求、投稿の削除の請求その他の手続に使われることがあることを理解し、同意します。
3私は、前項の記録が、法令に基づく場合その他必要な場合に、警察その他の関係機関に提供されることがあることを理解しました。
提供の相手方と同意の取り方は、別に定めるプライバシーポリシーと整合させます。保存期間と、映像を閲覧できる人の範囲も、社内で決めておきます。
本人確認と、誓約書を取る運用:事務所の書類での扱い
誓約書には、本人確認の条を置きます。氏名、住所、電話番号、生年月日などの申告事項が真実であること、偽名や架空の名義、第三者名義で利用していないこと、求められたときは本人確認書類の提示に協力することを確認します。偽名で利用する来店客は、迷惑行為があっても特定できず、請求も利用拒否も実効性がなくなります。そのため、本人確認の条は、誓約書の他の条文を支える土台になります。
ただし、本人確認書類の提示を求めることは、収集する個人情報の増加を意味します。必要なのは、利用を拒否するべき来店客を確認できる限度です。確認した書類の写しを取るのか、確認するだけで保管しないのかを、事前に決めます。写しを取るなら、保管の期間と管理の方法を、プライバシーポリシーの利用目的と合わせて定めます。
見比べ 来店客に差し入れてもらう誓約書の組み立て
誓約書の内容
規約と同じ禁止行為・違約金・口コミの条を、誓約書にも書き写す
誓約書は、規約の確認と同意、措置への承諾、本人確認、防犯カメラ・証拠利用の同意の四つに絞る
理由禁止行為や違約金は規約に一本化し、誓約書の署名は確認の行為として使う。改訂の漏れを防げる。
措置への承諾
利用者は、措置に異議を述べず、一切の請求をしない
規約に定める措置(施術の中断、退店、将来の利用拒否)が講じられることがあることを理解し、承諾する
理由全部の請求を放棄させる書き方は避け、措置の内容を理解したことの確認にとどめる。
署名の取り方
来店したときに受付で口頭で説明する
予約の段階か、初回の施術の前に、規約を読める状態にしたうえで署名してもらう
理由署名の前に規約を読む機会がなければ、確認の意味が弱まる。
ヒヤリングの問い 迷惑客対策の規約・誓約書を作る前に
どんな迷惑行為が、実際に起きていますか、起きそうですか。
この問いで決まること禁止行為として列挙する類型と、措置の重さが決まる。
施術の料金は、前払いですか、後払いですか。キャンセル料の定めはありますか。
この問いで決まること利用拒否のときの返金・精算の書き方が決まる。
予約はどのような方法で受けていますか(電話、予約サイト、公式のメッセージなど)。
この問いで決まること規約を事前に示す方法と、誓約書をいつ、どのように取るかが決まる。
防犯カメラはありますか。映像は誰が見て、どのくらいの期間保存しますか。
この問いで決まること個人情報の利用目的、提供先、保存期間の書き方が決まる。
本人確認書類の提示を求めますか。写しは取りますか。
この問いで決まること本人確認の条の書き方と、プライバシーポリシーとの整合が決まる。
規約・誓約書を使い始める前に確かめるリスト
- 禁止行為が類型ごとに列挙され、中断・退店・利用拒否の措置と結びついているか。
- 返金・精算の扱いが、提供済みの施術と未提供の部分を分けて書かれているか。
- 違約金が「予定」か「実損の賠償」かのどちらかに一貫し、超過請求の一文と矛盾していないか。
- 口コミの条が、虚偽・個人情報の公開・営業妨害の目的などに限られ、感想や評価そのものを禁止していないか。
- 防犯カメラの利用目的が具体的で、掲示と規約の両方で示されているか。
- 規約の変更の方法が、効力発生時期と周知の方法を定めているか。
- 誓約書が、規約の確認と同意に絞られ、規約と二重になっていないか。
迷惑客の規約・誓約書で起きがちなこと
よくあるご質問
迷惑な来店客に対して、将来の利用を断る旨を規約に書いておけますか。
書いておけます。禁止行為を具体的に列挙し、それに該当し、または該当するおそれがあると合理的に判断したときに、施術の中断、予約の取消し、退店の要求、将来の利用拒否をとる、という形が基本です。ただし、すでに受け取った料金の扱いは、提供済みの施術と未提供の部分を分けて書くほうが、消費者契約法10条の観点から説明がつきやすくなります。
迷惑行為をした来店客に、違約金を請求する条項は有効ですか。
一律に有効とも無効とも言えません。違約金は賠償額の予定と推定され(民法420条3項)、予定とすれば超過分の請求と両立しにくく、額が過大なら民法90条や消費者契約法10条の問題になります。消費者契約法9条1号は解除に伴う違約金を対象としますので、迷惑行為の違約金がそれに当たるかで、適用の有無が分かれます。額を行為の重さに応じて分け、説明のつく額にすることが大切です。
口コミに悪い評価を書いた客に、違約金を課すことはできますか。
事実に基づく感想や低い評価まで禁止し、投稿に違約金を結びつけることは、消費者契約法10条や民法548条の2第2項の観点から有効性が問われやすい書き方です。禁止の対象を、虚偽の内容、従業員の個人情報の公開、営業を妨害する目的の投稿などに絞り、違約金とは結びつけず、削除の依頼や実際に生じた損害の賠償を請求できると書く方向が、現実的です。
防犯カメラの映像を、警察や弁護士に提供してよいですか。
映像が特定の個人を識別できるときは個人情報で、個人データを第三者に提供するには、法令に基づく場合などを除き、あらかじめ本人の同意が必要です(個人情報保護法27条1項)。規約と誓約書に提供することがある旨と目的を書き、同意を得ておくとともに、個別の提供が法令に基づく場合などの例外に当たるかを、そのつど確かめます。利用目的の特定(同法17条1項)も欠かせません。
誓約書は、初めて来店するお客様全員に取る必要がありますか。
法律上、全員から取らなければならないという決まりはありません。誓約書は、規約を読んだことの確認、本人確認、撮影への同意を、署名で残すための書面です。迷惑行為が問題になりやすい業態なら、初回の施術の前に取る運用にし、署名の前に規約を読める状態にしておきます。誓約書を取らない場合でも、規約を事前に示し、予約や受付で同意を確認する導線を作ります。
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